大塚久雄『共同体の基礎理論』をめぐって (「共同体」を考える 1)

共同体

大塚(1955)は、共同体の発展に伴う形態の変化を、
土地の私的所有の拡大、血縁制的関係の弛緩・解消、共同体内分業、共同体内市場の発展によって、
「アジア的形態」「古典古代的形態」「ゲルマン的形態」の三形態を基本諸形態として分析した。

大塚は、「富」を包括している「土地」を「共同体」が占取し、個人が「共同体」として再生産していくと、
「共同体」内部に「固有の二元性」がはらまれてくることを説明している。
共同占取と私的所有、集団性と個人、といった共同体「固有の二元性」。
この二つのせめぎあいが、生産力向上のなかで、「共同体」の形態を変えていくというものである。

私的所有の拡大と共同体所有の縮小や、共同態規制(集団的、封建的な規範)の弛緩と私的領域の自立、
最終的には共同体の崩壊と個人の自立により近代資本主義の時代を迎える、
というのが大塚の考え方であると言えるだろう。

一方、大塚共同体論を批判した小谷(1982)は、
「大塚氏の共同体理論は外枠をマルクスに借りながら、
その内実はヴェーバーによって埋められている」ことを指摘し、
次の3項目を検討した。
①「アジア的共同体」の概念とインドの共同体の歴史的性格との相違 
②「共同体と所有の発展段階」の測定に「私的土地所有の発展という契機」を指標とすることの非妥当性 
③グローバルな視野からとらえる近代世界把握「共同体と近代」認識の問題点。

渡辺(2007)は、小谷(1982)の大塚共同体論に対する批判を取り上げ、
「日本などかなりの地域では、土地所有が重要な意義を有しており、
共同体的所有と私的所有の相互関係が重要な意味をもっていたこともまた事実である」としながら、
小谷の主張に首肯し「所有の対象を土地に限定しないかたちで、
普遍的な所有と共同体の発展の法則を追求すべきである。
共同体的土地所有から私的土地所有への移行をもって
共同体の普遍的な発展段階の尺度とするのは誤りであろう。
また、世界的にみれば、近代に入ると共同体は解体すると単純に言えない」
と述べている。

大塚の『共同体の基礎理論』が刊行された1955(昭和30)年の背景を、
内山(2010)は次のように説明する。
「近代化、市民社会化、民主化が絶対善のように語られた時代であり、
共同体は否定の対象であった。
封建社会の否定の上に資本主義の時代を築き、
さらに資本主義の否定の上に社会主義を築くのが歴史の発展と捉えられていた。
この時代には共同体は封建的なもの、個人の自由を奪うものと見えた」

内山は、その時代から変化した今日の思想状況について
「社会主義が未来へのエネルギーを喪失したばかりでなく、
近代的な市民社会もその問題点が目立つようになってきた。
個人がバラバラになった社会は資本主義の駒として人間が使われるばかりであり、
孤立、孤独、不安、ゆきづまりといった言葉が個人の社会にふさわしいことが明らかになってきた。
代わって、関係性、共同性、結びつき、利他、コミュニティ、
そして『共同体』が未来に向けた言葉として使われるようになってきた。
今日の共同体への関心は、過去への思いとしてではなく、
未来への探求として展開していくことになった。
自然と人間が結びなおし、人間と人間が結び直していく。
そういう社会のあり方を共同体としてつかみ直す意識が、広く展開するようになった」
と、述べている。

参考文献
小谷汪之[1982]『共同体と近代』 青木書店
大塚久雄[1955]『共同体の基礎理論』岩波書店
内山 節[2010]『共同体の基礎理論―自然と人間の基層から』 (シリーズ 地域の再生) 農山漁村文化協会
渡辺尚志[2007]『大塚久雄「共同体の基礎理論」を読み直す』日本経済評論社 第三章 日本近世村落史からみた大塚共同体論

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